NASのバックアップってどうやるのが正解? 3つの種類と運用例を紹介!

こんにちは、PC周辺機器メーカー直販サイト「アイオープラザ」店員、NAS(ナス)の「なっさん」です!

これまで2回に分けて、バックアップについてお話してきました。

1回目「そもそもバックアップってなに?」「なんのためにやるの?」というテーマについて、2回目「バックアップってどうやるの?」という疑問にお答えするために、「バックアップを難しくするふたつの要素」と、そのひとつである「バックアップの媒体」について深掘りしました。

今回はふたつ目の要素である「バックアップの頻度と種類」について詳しくお話しし、後半では適切な運用例まで踏み込みます。

「バックアップって1回やって終わりじゃないよね? 適切な運用が解らないんだけど」

といった疑問にお答えできるよう、”易しく”かつ”優しく”ご説明したいと思いますので、ぜひ最後までご覧ください!

※本コンテンツは法人向けです。

3種類のバックアップ方法とメリット・デメリット

前回お話しした内容をもとに、バックアップする媒体を決めても、

  • この1TBのデータを毎日全部バックアップすべきなのか? 1週間に1度でいいのか?
  • 毎回全部バックアップすべきなのか? 増えたデータだけでいいのか?
  • バックアップ媒体の容量が足りなくなったら、前のデータは消していいのか?

といった疑問に対する答えは出ません。
これらを適切に考えるには、まず「バックアップの種類」について知るべきです。

端的に言うと、バックアップの種類は3つあります。

  • フルバックアップ
  • 差分バックアップ
  • 増分バックアップ

順番に見ていきましょう。

フルバックアップ

その名のとおり「フル」でバックアップする……要するにNASのデータが2TBなら2TB、4TBなら4TBをまるごとバックアップする方法です。

「え? それって普通じゃないの?」

と思われた方、次のふたつと比べていただくと、違いがお解りいただけると思います。

差分バックアップ

最初の1回目はフルバックアップすることを前提に、2回目以降は「フルバックアップ以降増えたデータ」を、毎回バックアップする方法です。

例えばフルバックアップ時のデータが2TBで、2回目のデータが2.1TB、3回目のデータが2.2TBだった場合、2回目のバックアップでは0.1TB、3回目のバックアップでは0.2TBのデータをバックアップすることになります(厳密には、データというのは増減するものですが、ここでは話を単純化しています)。

増分バックアップ

こちらも最初の1回はフルバックアップすることが前提です。差分とよく混同され「違いってなんだっけ?」となりやすいのですが、増分バックアップは「前回のバックアップ以降増えたデータだけ」をバックアップする方法です。
例えばフルバックアップ時のデータが2TBで、2回目のデータが2.1TB、3回目のデータが2.2TBだった場合、2回目のバックアップでも3回目のバックアップでも、0.1TBのデータをバックアップすることになります。

各バックアップのメリットとデメリット

これらバックアップの種類は、端的に言えば

  • かかる時間
  • 必要な容量

というふたつの違いを生み出します。
どちらも

  • フルバックアップ>差分バックアップ>増分バックアップ

という順序で、よりかかる時間が長く、必要な容量も大きくなります。

「じゃあ、増分バックアップが一番いいよね?」

と思うかもしれませんが、一概にそう言えないのが難しいところです。
なぜならバックアップは「取ったら終わり」ではなく、いざというとき「復元する」ことに本質があるからです。

そして

  • 復元するときにかかる時間

は、

  • フルバックアップ<差分バックアップ<増分バックアップ

という順序で長くなります。

フルバックアップから復元する場合は「1回」で済みますが、差分バックアップから復元する場合は「2回(フルバックアップ+最新の差分バックアップ)」、増分バックアップから復元する場合は「1+n回(フルバックアップ+増分バックアップをした回数)」の復元作業が必要です。

当然ながら万が一の際、復旧は「とにかく早く」行うことが求められます。
確かに増分バックアップは「取る」段階では最もやりやすいかもしれませんが、回数が多過ぎるといざ復元しようとしたとき問題になりやすいのです。

だからと言って、

「じゃあ、毎回フルバックアップを取ろう」

という判断をすると、多大な容量のバックアップ媒体と時間が必要になります。
容量によってはひと晩で終わりませんから、例えば毎日フルバックアップを取ろうとすると、現実的に運用不可能……といったことになりかねません。

だから、3種類のバックアップを適切に組み合わせた運用を考える必要があるのです。
ではそれはどういう運用か? 絶対の正解はありませんが、次はその例を示したいと思います。

適切な運用例

結論を言うと、

  • 1週間に1度、フルバックアップを取る
  • 毎日、差分バックアップを取る
  • フルバックアップの世代は2世代分取っておく
  • バックアップ媒体は世代ごとに変更する

という運用をオススメします。図にすると以下のとおりです(1週間を稼働日5日と想定しています)。

以下、各項目の補足をさせてください。

1週間に1度、フルバックアップを取る

まず、フルバックアップを取る頻度は1週間に1度が適切です。
NASを使うメンバーがいない休日に行えば、たとえ容量が大きくてバックアップに1日以上かかる場合でも、業務に支障を来さずに済みます。

毎日、差分バックアップを取る

ただ、フルバックアップだけだと週の途中で万が一NASが壊れてしまった場合、その間に増えたデータは失われてしまいます。だから毎日……時刻としてはやはり誰もNASを使わない深夜帯に、差分バックアップを取ることで補うというわけです。

ただし、もし差分バックアップだとかかる時間や容量に問題がある……という場合は、増分バックアップでもよいと考えます。

フルバックアップの世代は2世代分取っておく

1度バックアップしたデータは消していいのか? というのも気になることだと思います。
これについては「最低限、過去1世代分は残した上で」新しくバックアップを取ることを、強く推奨します。

例えば先週取ったフルバックアップを消してから、新たにフルバックアップを取る場合……もしバックアップに失敗し、そのタイミングでNASが故障してしまったらどうなるでしょう?
せっかくのバックアップ運用も虚しく、データを喪失してしまいます。

だから「先週取ったバックアップデータは残した上で」、今週のバックアップを行うべきなのです。

バックアップ媒体は世代ごとに変更する

そしてそのバックアップ媒体は、先週と今週で分けましょう。
これは特にUSB HDDにバックアップを取る場合、オススメしたい内容です。

これにはふたつの意味があります。

ひとつはバックアップ媒体自体の故障、盗難などのリスクに備えるためです。2世代を同じ媒体に取っていた場合、その媒体自体が故障したり、盗難に遭ったりすれば、データが失われます。

もうひとつはウイルス/マルウェア感染対策です。NASがウイルス/マルウェアに感染した場合、接続されたUSB HDD等まで同様に感染してしまうリスクがあります。そうなれば、最悪バックアップデータが無効化されてしまいますので、少なくとも1世代分は「NASと切り離した状態で」保管すべきです。

もちろん今週バックアップを取る媒体も、毎日バックアップを取る度にNASから切り離しておくことが望ましいですが、運用上現実的か? という問題もありますし、もしそうしたとしても、毎晩バックアップを取る時点で感染してしまえばリスクは避けられません。

このように、私たちは「物理的にふたつの媒体を毎週交互に使い分ける運用」をオススメします。
なおこの際、災害対策まで考慮するなら、バックアップした媒体は毎週異なる地域の拠点等に送付する、といった運用が望ましいでしょう。
その場合は配送時の盗難・紛失に備えてバックアップデータを暗号化するなどの措置も必要ですが……まず現実的に可能な範囲で「とにかくバックアップを取ってほしい」というのが、私の強い願いです。

もちろんここに書いた運用がベストです! と言うつもりはありません。
使う媒体によっても適切な運用は異なるでしょうし、究極的にはケースバイケースです。

これをひとつのモデルケースとしていただき、あなたにとってより良いバックアップ運用を模索いただけると幸いです。

まとめ

というわけで、今回はバックアップの「頻度と種類」および「そこから考える適切な運用例」についてお話ししました。

バックアップには「フルバックアップ」「差分バックアップ」「増分バックアップ」の3種類があり、それぞれ「かかる時間」「必要な容量」が異なります。

この点、かかる時間が短く、必要な容量も最も少ないのは増分バックアップですが、反面復元の際にかかる時間は最も長いというデメリットがあります。
復元にかかる時間を最も短くしたいならフルバックアップが有利ですが、バックアップを取る際の時間と容量はもっとも不利……差分バックアップはその中間です。

これらの特性を鑑みて適切な運用を考えると、

  • 1週間に1度、フルバックアップを取る
  • 毎日、差分バックアップを取る

という形がひとつのモデルケースになり得ます。
また、バックアップ媒体の故障や災害への対策を考慮した場合、

  • フルバックアップの世代は2世代分取っておく
  • バックアップ媒体は世代ごとに変更する

といった要素も運用に組み込むべきです。

以上、これまで3回にわたってバックアップについてお話してきました。

バックアップを取る媒体として適切なのはLTOなどの磁気テープメディアですが、初期費用も含めたバランスからすると、手軽に始められるのはUSB HDDです。

いずれにせよ、バックアップをすべき理由は「データを喪失しないこと」にありますから、どれほど完璧ではない形だとしても「やらない」より「やる」ほうが遥かにリスクを低減できます。
もし現在NASのバックアップをされていない方、「まずはできる範囲で」構いませんので、ぜひ今すぐ運用をご検討ください。

と……いうわけで、次回はバックアップに関する記事の完結編として、

「じゃあ、バックアップに使うUSB HDDって、どれを買えばいいの?」

という疑問にお答えし、選び方や具体的な商品についてお話しします!

過去2回の記事をまだご覧になっていない方は、ぜひ併せてご参照ください。

その他、「NASについての全般的なご相談」も広く受け付けております。
ここまで触れてきた内容の他、なにか導入の壁となるご懸念がございましたら、ぜひお気軽にお問合せください!

投稿者プロフィール

NAS(ナス)の「なっさん」
NAS(ナス)の「なっさん」
PC周辺機器メーカー アイ・オー・データ機器の直販ECサイト「アイオープラザ」店員。
"難しい"PC周辺を"だいたい本音"で語り、"お客様が技術的な知識を学習せずに選べる店"を目指しています!