NASの容量、どう選ぶ? 考えるための「公式」とは?

こんにちは、PC周辺機器メーカー直販サイト「アイオープラザ」店員、NAS(ナス)の「なっさん」です! 
いざNASを買おうと思ったとき、最終的に

「何TBのラインアップを選べばいいんだろう?」

と、「容量の選択」で迷われる方がいらっしゃるのではないでしょうか?
本記事ではそんなあなたへ向け、

「NASの適切な容量を考えるための公式」

をお話しします。
今回も“だいたい本音”でお話ししますので、ぜひ最後までご覧ください! 

※本コンテンツは法人向けのNASについて書かれています。 

NASの適切な容量を考えるための公式

まずは結論から。
「NASの適切な容量を考えるための公式」は、以下のとおりです。

NASの本体容量÷2 >年間データ増加量×運用年数+現在のデータ量

「なにこれ? どういうこと?」

と思われた方、ご安心ください。
順を追ってご説明いたします。

ただ、その前にいきなりお詫びしておくと……「公式」と言っておいてなんですが、これは公に広く合意の取れた定理というわけではありません。
ですから、厳密には公式という言葉の定義には当てはまらず、”私たちの持論”と言ったほうが正確です。
「ある程度の論理性を持った考え方」といった程度に捉えていただけると助かります。

NASの本体容量÷2とは?

「NASの本体容量÷2」とはなにか?
NASを買うときには「必要な容量の2倍」のラインアップを選ぼう、という意味です。

例えば「4TB」の容量が欲しいなら、買う商品としては倍の「8TB」を選ぶことになります。

「なんで? 余裕を持つべきということ?」

そういうことではありません。
法人向けのNASは「本体容量と実効容量(実際にデータ保存領域として使える容量)が違うのが、半ば当然」だからです。

重要なデータを集中して保存するNASは、故障に備えて様々な工夫が施されています。
その最たるものが” RAID”(レイド)といった、「1部のHDDが故障しても、NASの稼働が止まらないよう、データを多重保存する機能」です。
この機能をONにするとデータを多重保存するので、本体容量>実効容量となります。

RAIDにはRAID1、RAID5、RAID6など幾つかの種類があり、その種類によって「実効容量」の割合が異なります。
具体的には以下のとおりです。

RAID等の種類実効容量
RAID1、拡張ボリューム(当社独自機能)搭載したHDDの2分の1本体容量:2TB(1TB×2台)
実効容量:1TB
RAID5搭載したHDD-1台分本体容量:4TB(1TB×4台)
実効容量:3TB
RAID6RAID6
搭載したHDDの-2台分
本体容量:6TB(1TB×6台)
実効容量:4TB

このように、冗長性対策を行うNASは「本体容量」と「実効容量」が異なります。
そして採用するRAID等の種類によって実効容量の割合は変わるものの、我々が最もメジャーだと考える「RAID1、拡張ボリューム」の実効容量が「搭載したHDDの2分の1」であることから、“NASを買うときには「必要な容量の2倍」のラインアップを選ぼう”……つまり、

「NASの本体容量÷2」

と書かせていただきました。
もちろんRAID5やRAID6を採用される場合、ここは

「NASの本体容量/搭載するHDDの台数×(搭載するHDDの台数-1台分)」
「NASの本体容量/搭載するHDDの台数×(搭載するHDDの台数-2台分)」

と書き換えていただくので構いません(ただ、こう書くと大分ややこしいですね……)。

さて、ここまでは

NASの本体容量÷2 >年間データ増加量×運用年数+現在のデータ量

という「公式」のうち、左側の「NASの本体容量÷2」についてご説明しました。

次項では右側の、

「年間データ増加量×運用年数+現在のデータ量」

についてお話しします。

年間データ増加量×運用年数+現在のデータ量とは?

この式で言いたいことは要するに、

「データは増え続けるもの」

ということです。

例えば現在のデータ量が1.5TBの場合、将来も1.5TBのまま増えないなら、実効容量2TBあれば事足ります。
しかし1年で500GBデータ量が増えるチームの場合、NASを導入して1年後には「容量が足りない!」という悲鳴が上がることになるでしょう。

ただ、だからと言って「一番大きい容量のモデルにしよう」とした場合、無駄な金額を投資してしまいかねません。
「本当は4TBが適正なのに、60TBを導入する」なんてことになれば、100万円以上の金額差が生じます。

これは極端な例ですが、将来のデータ増加量をある程度の精度で考えるべきだということが、お分かりいただけるのではないでしょうか?
それを表したのが、

「年間データ増加量×運用年数」

という部分です。

では、どうすれば将来のデータ増加量を”ある程度の精度”で予測できるのでしょうか?

5年間のデータ増加量を、どう予測する?

私たちが推奨するNASの運用年数は5年です。
さて、今から5年間、あなたの職場で増えるデータ量をどうすれば予測できるでしょう?

結論を申し上げると、私たちの答えは、

「無理。難しい」

です。

「なんだそりゃ。ふざけんな!」

とお怒りになるのは少しお待ちください(すいません)。

「将来のデータ増加量をある程度の精度で考えるべき」というのは嘘ではありません。
ただ一方で、それが「現実的にかなり難しいこと」だというのも本音です。

なぜならデータが増えるプロセスや要因は、単純ではないからです。
チームメンバーの数、業務内容、扱うデータの種類などによっても、データの増え方は変化します。技術の進歩によって、同じ種類のデータですら大容量化します(例えば画像が高解像度化するなど)。
過去5年の増加量を見て、これからの5年が同じように推移する保証はどこにもありません。

「じゃあ、やっぱり余裕を持って容量を選ぶしかないということ?」

半分はYesです。
ただし先に述べたような「本当は4TBが適正なのに、60TBを導入する」といった考え方は明らかにもったいないでしょう。

究極的には「予算が許す限りの範囲で、最大容量を選ぶ」という方法もありですが、

「もう少し……せめてなにかヒントになるような話はないの?」

と思われるかもしれません。
それについては、

「よく扱うデータの種類を、考慮するのはいかがでしょう?」

というのが私たちの考えです。

データの種類によって、容量の大きさは違う

「そんなの常識だよ」と言われるかもしれませんが、データの種類によって容量の大きさは全く違います。
例えば、

  • 動画データ
  • 図形や画像を含んだ文書データ
  • テキストデータ
  • 高解像度のイラストや写真データ

という4種類のデータを「容量が小さい順」に並べたらどうなるでしょうか?

もちろん正しくは「ケースバイケース」ですが、あくまで”データの性質的に”大きくなりにくいもの、大きくなりやすいものがどれか、という観点でお考えください。

答えは以下のとおりです。

C<B<D<A

例として、私の周囲にあるデータを挙げてみましょう。

まず「C.テキストデータ」について、手元にある「仕事のメモ」を書き連ねたファイルは78KBでした。
文字数を調べたところ、約30,000字です。

次に「B.図形や画像を含んだ文書データ」について、少し前に作ったプレゼンテーション資料は4.44MB(4,552KB)でした。
ちなみにページ数は51ページです。

「D.高解像度のイラストや写真データ」について、4000万画素のカメラで撮影したJPEGデータは20MB(20,480KB)前後です。

最後「A.動画データ」について、地デジの映像を1時間録画すると7~8GB(7,340,032KB~8,388,608KB)前後になります。

<データの種類別 容量の大きさ例>

C.テキストデータB.図形や画像を含んだ文書データD.高解像度のイラストや写真データA.動画データ
78KB4,552KB20,480KB7,340,032KB
※あくまで私の周囲にあるデータを基にした一例です。

もちろん「画像の形式にもよる」「動画はビットレートや解像度、再生時間によってまるで容量が違う」などの異論はあるでしょうが、少なくとも「日常的に動画編集をするチーム」「文書ファイルの作成しかしないチーム」では、5年間のデータ増加量に大きな差が出ることは間違いないと考えられます。

ですからNASを使うチームの「本業」がどういう種類のデータを主に扱うのか、ということは、NASの容量を選ぶ上で考慮すべきだと考えます。
ただしそれでも「将来のデータ増加量をある程度の精度で考える」のは酷く難しいことです。

だから最終的には、ある程度開き直るしかありません。例えば、

「まあ、どうしても足りなくなったら、容量を後から変えればいいか」

という風に。

NASの容量は後から変えられる

意外と知られていないのですが、NASの容量は後から変えられます。

「HDDを大容量品に入れ替えればいいんでしょ?」

と思った方、そのとおりです。
ただし一般的に、容量を変えるには「NASの稼働を止め」「新しいHDDに付け替えた上で」「RAIDを再構築し」「バックアップデータから復旧する」といった手順が必要となります。

つまりその間業務が停止してしまいますし、移管に大きな手間がかかるので、気軽に行えるものではないでしょう。
しかし機種によっては、割と簡単に行えます。

ことさらに宣伝する意図はありませんが、当社独自の冗長性対策機能である「拡張ボリューム」であれば、それが可能です。
やっていることはRAID1と同じく「2台のHDDに同じデータを書き込む」ことで、「1台壊れてもNASの稼働が止まらない」という機能です。

ただ、拡張ボリュームにはRAID1と違い、

「NASの電源を入れたまま、HDDを大容量品に交換できる」

というメリットがあります。

例えば「1TB×2台」構成のNASの場合、まず片方を「4TB」に交換し、4TBのHDDにデータが2重化されたら、もう1台の1TBも4TBに交換……片方ずつ交換することで、NASの運用を止めないまま、大容量化ができるというわけです。

もちろん大容量化する際、HDDを購入する代金は追加でかかります。
しかしHDDは消耗品ですから、数年稼働した上で交換するなら、故障リスクを低減する上でも効果のある投資と言えます。

もちろん私たちも「後から変えられるんだから、NASを買うときはなんとなく容量を選べばいいんです!」と言いたいわけではありません。
あくまで、最後の手段としてはそういう方法もあるという話です。

ちなみに拡張ボリュームに対応した機種は、当社「LAN DISK H/X/Aシリーズ(Linux OS搭載モデル)」
「LAN DISK Zシリーズ(Windows OS搭載モデル)」は非対応ですので、ご留意ください。

まとめ

本記事では、「NASの適切な容量を考えるための公式」として

NASの本体容量÷2 > 現在のデータ量+年間データ増加量×運用年数

という考え方をご紹介させていただきました。

左側の式では「RAID等の冗長性対策機能」を採用することを前提に、NASの「本体容量」と「実効容量」は異なるという話から「NASの本体容量÷2」を実効容量として考える方法をお伝えしました。

右側の式では「データは増え続けるもの」という原則を基に、「将来のデータ増加量をある程度の精度で考えるべき」とお話ししました。
ただしそれは「現実的にかなり難しいこと」なので、「本業でよく扱うデータの種類を考慮」して最適な容量を考えるのがベターです、とも。

機種によっては「NASの電源を入れたまま、HDDを大容量品に交換できる」ので、最終手段としてはそういう方法も念頭に置きつつ、あなたの環境に適切な容量ラインアップをお選びいただけると嬉しいです!

なお、もし容量以外の観点で機種選びにお困りの方は、ぜひ以下の記事もご覧ください。

またその他、「NASについての全般的なご相談」も広く受け付けております。
ここまで触れてきた内容の他、なにか導入の壁となるご懸念がございましたら、ぜひお気軽にお問合せください!

投稿者プロフィール

NAS(ナス)の「なっさん」
NAS(ナス)の「なっさん」
PC周辺機器メーカー アイ・オー・データ機器の直販ECサイト「アイオープラザ」店員。
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