RAIDとバックアップの2つの違いとは? 両方必要なの?【NAS、ファイルサーバー】

こんにちは、PC周辺機器メーカー直販サイト「アイオープラザ」店員、NAS(ナス)の「なっさん」です!
今回は、

  • RAID(レイド)とバックアップの違い

についてお話しします。
NASやファイルサーバーを運用する上で、よく「似たような機能」として語られることがある「RAID」「バックアップ」

このふたつの言葉を知ったばかりの方には、

「RAIDとバックアップって違うの?」
「RAIDとバックアップって、両方必要なの?」

といった疑問がつきものです。
確かに、どちらも「データを二重化する」という要素を含むので、似ていると言えば似ています。混同しがちなのも無理はないでしょう。

結論から言えば、このふたつは

  • 全くの別物

というくらい違うのですが、

「じゃあどう違うのか?」
「どのくらい違うのか?」

という点を、敢えてなるべく専門的な話を横に置いてご説明します。
今回も、“だいたい本音”でお話ししますので、ぜひ最後までご覧ください!

※本記事は主に法人向けの内容です。

そもそもRAID、バックアップってなに?

まずは根本的なお話しから。

「RAIDとバックアップって違うの?」

という問いに対しては、冒頭で述べたとおり、

  • 全くの別物

と言えますが、その違いをお話しするには、前提として、

「そもそもRAIDってなに?」
「そもそもバックアップってなに?」

という点を明らかにする必要があると思います。
それぞれ簡単にご説明させてください。

RAIDってなに?

RAIDというのは、ひと言で言えば、

  • 複数のHDD(ハードディスク)を、ひとつの機器(NAS、ファイルサーバー等)として運用する技術/機能

を指します。
例えば、

  • 1TBのHDD

をそのまま使えば容量は当然「1TB」ですが、これを2台組み合わせて、

  • 2TBの機器として使う

これが「RAID」です。
同じように、1TBのHDDを4台組み合わせ、

  • 4TBの機器として使う

場合もあります。
そしてその場合の「使い方」として、最もポピュラーなのが、

  • データを二重化する

という使い方です。
こうすると、例えば、

  • 1TBのHDD2台を、ひとつのHDDとして使う
  • 1TBのHDD2台両方に、同じデータを書き込む

という感じになります(ちなみにこれをRAID1と呼びます)。
要するに、実際データ領域として使える容量(実効容量)は「1TB」のまま増えませんが、

  • もしHDDが1台壊れても、運用が止まらない

というメリットが生まれるというわけです。
これを、

  • 冗長性を担保する

と言います。

RAIDには幾つかの種類がありますが、その大半はこの「冗長性を担保する」ために使われることが多いです。

では、これに対して「バックアップ」とはどういうものなのでしょうか?

バックアップってなに?

結論から申し上げると……RAIDが平たく言えば、

  • (NASやファイルサーバーの)運用を止めない

ことを目的とした機能であるのに対し、バックアップは、

  • データを消失(喪失)しない

という目的を持った機能です。

NASやファイルサーバーは、機器である以上いつかは壊れます。
それが「いつ壊れるか」確実に予測できるなら、バックアップは必要ないかもしれません。実際、私たちはそれも重要なことだと考え、故障の予兆を通知するサービスを無償で提供しています。

しかし残念ながら、それでも故障時期を100%確定させることはできません。
予期しないタイミングで故障してしまうリスクはゼロではない……その際、最悪のケースは、

  • データを消失(喪失)する

という事態です。
例えば取引先の情報、設計データやコンテンツデータなど、事業に直結するようなデータが失われた場合、その被害は甚大です。失われてから後悔しても、どうにもなりません。

ですから、そのような万一の事態に備えて、

  • 運用するNASやファイルサーバーとは「別の機器に」データを二重化しておく

これが「バックアップ」です。

RAIDとバックアップの2つの違い

細かいことを言い出せばきりがないですが、大まかに言うと、RAIDとバックアップの違いは以下の2つに集約されます。

  1. 機能の目的が違う
  2. 運用の方法が違う

ひとつ目は要するに、上で説明した内容です。

  • RAID:NASやファイルサーバーの運用を止めないため、冗長性を担保する
  • バックアップ:NASやファイルサーバーの故障時に、データ消失(喪失)を防ぐ

ですから、

「RAIDとバックアップって、両方必要なの?」

という疑問に対しては、

「はい、両方必要です」

という答えになります。

RAIDだけでは、データ消失への備えとして不十分です。
バックアップだけでは、運用を止めない備えとして不十分です。

このように、データを二重化するという意味では同じことをするのですが、「なんのために」やるのかという点が違います。
そしてこの目的の違いがあるがゆえに、ふたつ目の「運用の方法」の違いが生まれるのです。

というわけで次は、

「RAIDとバックアップを両方運用に取り込むには、具体的にどうしたらいいの?」

という疑問に答えることで、この「運用の方法」の違いを具体的にお話しします。

RAIDとバックアップは両方必要……具体的にどうする?

ここまでは、RAIDとバックアップの違いや必要性をお話ししました。
それを踏まえた上で、次はあなたがNASやファイルサーバーを運用する際、

  • 両方を実現するためには、具体的にどうすればいいのか

をお話しします。

RAID:NASを選ぶときは「2ドライブ」以上の機種を選ぶ

まずRAIDですが、こちらはシンプルです。

  • NASやファイルサーバーを選ぶ際、「2ドライブ」以上の機種を選ぶ

これが、RAID環境を実現するための唯一にして最大の観点です。
これは要するに、

「RAID機能に対応した機種を選んでください」

ということなのですが、RAIDという機能の前提が

  • 複数のHDD(ハードディスク)を、ひとつの機器(NAS、ファイルサーバー等)として運用する技術/機能

である以上、2ドライブ(2台)以上のHDDを搭載した機種でなければ、RAIDは組めません。
2ドライブ”以上”と書いたのは、機種によって4ドライブや6ドライブのものもあるからです。いずれにせよ、1ドライブの商品ではRAIDは組めないのでご注意を。

ちなみに、当社の2ドライブ以上のNASは、全てRAID機能に対応しています。
中でもオススメなのは、

  • RAIDeX(レイドエックス)

という、当社独自のRAIDに対応した機種です。
この機能は、「2台のHDDに同じデータを書き込む」もので、従来のRAID1と呼ばれるものに近いです。ただし、

  • 読込は片方のHDDからのみ行うため、2台のHDDの劣化(摩耗)具合に差が出やすく、故障時期がばらけやすい(RAID1は両方のHDDから読み込む)。
  • 片方のHDDが壊れて交換する際、データの書き込まれた領域だけがリビルド(再構築)対象になるため、作業時間が短くて済む(RAID1は使っていない領域を含め、全領域をリビルド対象とする)。
  • 運用を停止せずに、あとから大容量のHDDに交換できる(RAID1は一旦データを別の媒体に退避し、電源を落として大容量のHDDに入替え、退避したデータを入れ直す)。

といった点がRAID1よりも優れており、より信頼性が高いだけでなく、運用面でもメリットがあります。

↓RAIDeXに対応したNASを見てみる↓
2ドライブ以上 LinuxベースOS搭載NAS

バックアップ:運用を考えるために必要な、3つの検討ポイント

バックアップについては、運用に組み込む上で少なくとも3つの検討ポイントがあります。

  1. バックアップ機能はなにを使うか?
  2. バックアップ先はどこにするか?
  3. バックアップの種類と頻度をどうするか?

順番に軽くご説明しましょう。

1.バックアップ機能はなにを使うか?

誤解を恐れずに言えば、これは要するに、

  • NAS(やファイルサーバー)に標準搭載されたバックアップ機能
  • 外部のバックアップソフトウェア

のどちらを使うか? ということです。

NASについて言うと、Windows OSを搭載した機種と、それ以外(LinuxベースOSなど)を搭載した機種に大きく分かれます。
このうち「それ以外」を搭載した機種には、標準で「バックアップ機能」が搭載されていることが多いでしょう。

「Windows OSを搭載した機種には、バックアップ機能がないの?」

と思うかもしれませんが、あります。
OSに標準搭載された「Windows Serverバックアップ」という機能がそれです。ただしWindowsの場合、サードパーティーが提供するWindows対応のバックアップソフトウェアが多く市販されているので、そちらを使う選択肢もあります。

そういうソフトウェアのほうが、より細かい設定などができる傾向があると思いますが、もしこだわりがなければ、基本はNASに搭載された機能をお使いになればよいでしょう。

2.バックアップ先はどこにするか?

バックアップ先の選択肢として考えられるのは、大まかに言えば

  • ネットワークストレージ(NASなど)
  • USB等で接続するストレージ(外付けHDDなど)
  • クラウドストレージ

の3種類です。
このうち最もお手軽で安価なのは、

  • USB等で接続するストレージ(外付けHDDなど)

ですので、もしバックアップ初心者ということなら、まずはそこから始めるのが私たちのオススメです。
もちろん、NASやクラウドストレージをバックアップ先にするメリットもありますが、最も回避すべきは、

  • バックアップを取らず、データを失う事態

ですから、外付けHDD等にバックアップを取る手法が100%完璧とは言えないものの、取らないより遥かに良いと言えます。

ちなみにバックアップに最適な外付けHDDについては、極論すると、

  • 高信頼性HDDを搭載したモデル

をオススメします。
具体的には以下のシリーズです。

↓高信頼性HDDを搭載したUSB HDDを見てみる↓
法人向け外付けハードディスク HDJA-UTNBシリーズ

その理由については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ気になった方はご一読ください。

3.バックアップの種類と頻度をどうするか?

バックアップの「種類」を大まかに言うと、3種類あります。

  • フルバックアップ:全てのデータをバックアップする
  • 増分バックアップ:前回のバックアップ後に増えたデータだけをバックアップする
  • 差分バックアップ:フルバックアップ後を基準に、増えたデータだけをバックアップする

ちょっと解りづらいのは「増分」と「差分」の違いでしょう。

例えば週に1度、土曜日にフルバックアップを取り、他の6日間は「増分バックアップ」を取るとします。この場合、増分で取るバックアップデータは「その日に増えたデータ」だけです。
これに対し、もし他の6日間を「差分バックアップ」にする場合、毎回「日曜日以降に増えたデータを全て取る」ということになります。

「じゃあ増分のほうが、データ量が少なくて済むんじゃない?」

と思われた方……そのとおりです。

「なら増分でいいじゃん」

と思いそうなものですが、そうとは限らないのがややこしいところです。
バックアップは「取って終わり」ではなく「万が一のとき、復元する」ところまでが1サイクルです。

データが多数分割されていると、復元の回数も多くなります。
差分バックアップの場合、復元する際には、

  • フルバックアップデータ+差分バックアップデータ

のふたつで済みますが、増分バックアップの場合は、

  • フルバックアップデータ+増分バックアップデータ×日数(回数)

になるというわけです。

バックアップデータを復旧させるまで、業務が止まってしまうリスクがありますから、復旧作業は一刻を争います。確かにデータ量は多めになりますが、その観点では差分のほうが有利なわけです。

もうひとつの観点「頻度」については、上の例で言う「毎日取るかどうか」というところです。ただしこの点については、

「毎日取ってください」

と言わせていただきます。

理想的には毎日フルバックアップを取り、2世代分を保持するのが良いですが、フルバックアップというのはデータ量が増えれば増えるほど、極端に時間がかかりますので、毎日行うのは現実的ではないのです。
それこそ、バックアップのために業務に支障が出るという、本末転倒な事態を引き起こしかねません。
ですから、

  • 週に1度フルバックアップを取り、他の日は毎日増分または差分でバックアップを取る

というのが、現実的な最適解だと思われます。
この辺りの話は以下の記事で図解を交え詳しくご説明していますので、よろしければ併せてご参照ください。

まとめ

というわけで今回は、

  • RAID(レイド)とバックアップの違い

についてお話ししました。
ふたつとも「データを二重化する」という意味では似た機能と言えますが、

  1. 機能の目的
  2. 運用の方法

が異なります。
ひとつ目を具体的に言うと、

  • RAID:NASやファイルサーバーの運用を止めないため、冗長性を担保する
  • バックアップ:NASやファイルサーバーの故障時に、データ消失(喪失)を防ぐ

ということになり、これが運用方法の違いにも紐づきます。
要するに、ふたつは全くの別物ですから……もし、

「RAIDとバックアップって、両方必要なの?」

と訊かれれば、私たちとしては、

「はい、両方必要です」

と本音で胸を張ってお答えします。

ではこの両方を実現しようとしたとき、具体的になにをどうしたらいいのか? ですが……まずRAIDについてはシンプルに、

  • NASやファイルサーバーを選ぶ際、「2ドライブ」以上の機種を選ぶ

というのが、RAID環境を実現するための唯一にして最大の観点です。
特にオススメなのは、当社独自の「RAIDeX」という機能を搭載したNASで、これは従来のRAID1と比較し、より信頼性が高いだけでなく、運用面でもメリットがあります。

↓RAIDeXに対応したNASを見てみる↓
2ドライブ以上 LinuxベースOS搭載NAS

バックアップについては、

  1. バックアップ機能はなにを使うか?
  2. バックアップ先はどこにするか?
  3. バックアップの種類と頻度をどうするか?

という3つの観点で検討する必要がありますが、それぞれ迷われた方は、以下のようにすることをオススメします。

  • 1.バックアップ機能はなにを使うか?
  • ⇒NASに標準搭載されたバックアップ機能。
  • 2.バックアップ先はどこにするか?
  • ⇒高信頼性HDDを搭載した外付けHDD

↓高信頼性HDDを搭載したUSB HDDを見てみる↓
法人向け外付けハードディスク HDJA-UTNBシリーズ

  • 3.バックアップの種類と頻度をどうするか?
  • ⇒週に1度フルバックアップを取り、他の日は毎日増分または差分でバックアップを取る

バックアップについては奥が深いので、さらに詳しく知りたい方は、下記も併せてご参照ください。

↓バックアップの必要性↓

↓バックアップ先はどこにするか?↓

↓バックアップの種類と頻度をどうするか?↓

また、RAIDやバックアップに限らず、NASを運用する上での注意点について総括的にお話しした記事もありますので、より全体像について詳しく知りたい方は、続けて以下をご参照いただけると幸いです。

その他、「NASやバックアップについての全般的なご相談」も広く受け付けております。ここまで触れてきた内容の他、なにか導入の壁となるご懸念がございましたら、ぜひお気軽にお問合せください!

投稿者プロフィール

NAS(ナス)の「なっさん」
NAS(ナス)の「なっさん」
PC周辺機器メーカー アイ・オー・データ機器の直販ECサイト「アイオープラザ」店員。
"難しい"PC周辺を"だいたい本音"で語り、"お客様が技術的な知識を学習せずに選べる店"を目指しています!